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田中創一朗 | SOICHIRO TANAKA ザルファ世代×メタバース領域の将来性/メタバースマーケティング
1996年以降に生まれたザルファ世代。才能と購買力のあるザルファ世代は企業のマーケティングにとって重要なターゲットになります。そこでDASのメタバース事業を担うGeekOut代表の田中創一朗氏にメタバースマーケティングの将来性とOCEAN’Sとのグループシナジーについて迫りました。
花田 Robloxをはじめ、メタバース領域のサービスにおけるユーザーはザルファ世代が中心と言われています。そもそもザルファ世代とはなんでしょうか。
田中 マーケティング用語でいえば、ザルファ世代とは1996年以降に生まれた人のこと。Z世代とアルファ世代を合わせ、このような名称がついています。しかし私たちはザルファ世代にターゲットして事業を行っているわけではありません。Robloxをはじめ、企業がメタバース領域に進出する目的は、Robloxでワールドを展開している、あるグローバルブランドのCEOが語っているように、「ザルファ世代にメッセージを届けたいのであれば、彼らがいるところにブランドを当てていかないといけない」というものであるべき。現在、「メタバース」や「Roblox」という言葉がバズワードのように流通していますが、「乗り遅れないように、何かをやらなければ」ではなく、「ザルファ世代に何かを届けたいなら、Robloxは非常に有効なプラットフォームです」ということを常々、クライアント様にお伝えしています。
花田 現在、Roblox以外にもメタバースのプラットフォームにはさまざまありますが、なぜ、Robloxが注目されているのでしょうか。
田中 理由は三つあります。一つ目は圧倒的にユーザー数が多いこと。最新の発表によると、世界におけるDAU(一日にアクティブとなるユーザー数)は6600万人であり、この数字はFortniteやMinecraftなど、Robloxを除く、他のメタバースのプラットフォームをすべて合計した数よりも桁違いに多い のです。 二つ目は、クリエイターが表現できる幅が非常に広いということ。Robloxは他のプラットフォームに比べ、ユーザー生成コンテンツ(UGC)に重きを置いており、ユーザーやクリエイターが独自のゲームやコンテンツを生成するためのインフラが整備されています。そのため独自の世界観を構築しやすく、その点もRobloxに参入しているブランドに高く評価されている点だと考えられています。 三つ目は、クリエイターエコノミーの完成度が非常に高いということ。Robloxは「ゲーム界のYouTube」とも呼ばれ、Roblox内でコンテンツやオリジナルグッズを制作して発売し、収益を得るレベニューシェアの仕組みが確立しており、大企業や著名ブランドが次々とRobloxに参入しています。
花田 ブランドによるRobloxでの成功事例を教えてください。
田中 一つ目は、本田技研工業です。2023年3月、同社はRobloxに公式ワールド「Honda Rewired」を設置。ユーザーは除雪機や船外機など、同社のパワープロダクツ製品8種を使った体験を提供するだけでなく、ゲーム制作者同士や、ゲーム制作者とプレイヤーがつながる、新たな試みを展開しました。 二つ目は、日本の女性バーチャルアイドルグループGEMS COMPANYです。「Roblox」内で遊べる『顔から逃げるゲーム(Escape Running Head)』とGEMS COMPANYがコラボしたもので、2023年5月1日に実装開始されました。追いかけてくる巨大な顔をGEMSCOMPANYの顔に変更するという、非常にシンプルな仕掛けですが、1日に数十万人もの人が特設ステージで遊び、GEMS COMPANYを知らない世界中の子どもたちが彼女たちを知るきっかけになり、大きな影響力をもたらしました。
花田 現在、メタバース領域における市場規模は急速に拡大しており、Robloxにおける日本人のクリエイターやユーザーの数も伸長することが期待されます。私たちOCEAN'Sも「どうやったら日本発のサービスを成長させるか?」などの観点から、御社とともに事業を開発したいと考えています。
田中 いま、私が考えているのはRoblox内での広告活動。Robloxで広告を出稿するとしたら、仮想空間の広告枠を真っ先に思い浮かべますよね。でもその枠に何の広告を出し、ユーザーにどんな行動をとってもらうかを考えることが重要で、たとえばRobloxの広告枠に仮想空間とは関係ない、実社会のサービスやプロダクツの広告があったら、せっかく仮想空間に没入しているユーザーの体験に水をさすことになってしまう。「ここにいる人と何をするか?」「その広告に触れることによって、ユーザーにRobloxで何をしてもらうか?」「それが、広告主の現実社会とどう関わるか?」などの視点に立ち、御社の知見を借りながら一緒に考えていきたいと思います。
(L to R)田中創一朗/花田菜々子
(L to R)田中創一朗/花田菜々子
PROFILE
田中創一朗 | SOICHIRO TANAKA
GeekOut株式会社 代表取締役
京都大学大学院にて哲学・倫理学を研究し修士(文学)を取得後、国内・海外アドテクノロジープラットフォームでのプロダクトマネジメント、事業開発、大手オンラインパブリッシャーへの広告技術コンサルタントを経て、新興技術領域でのクリエイター支援とマスアダプションの促進のため、2022年GeekOut株式会社を設立、現職に就任。
花田菜々子 | NANAKO HANADA
OCEAN’S株式会社 Senior Customer Success
国内アドテクノロジープラットフォームでの広告運用コンサルタントを経て、2021年DASグループへ参画。カスタマーサクセスとして、広告主・広告代理店の海外プラットフォームの運用支援やコンサル領域における導入サポート。コーポレートブランディングを兼務。